
遷延性意識障害と診断されたら
Persistent vegetative state
交通事故により被害者が遷延性意識障害と診断された場合、ご家族は非常に厳しい現実と向き合うことになるでしょう。遷延性意識障害は交通事故の後遺障害の中で最も重度な障害であり、自力での生活ができなくなることから生活支援が不可欠なため、生涯の損害は測り知れないものになります。ここでは、遷延性意識障害の基本から、後遺障害認定や損害賠償の考え方までをわかりやすく解説します。
遷延性意識障害の症状
遷延性意識障害は、重度の脳損傷により意識が回復せず長期間にわたり自力での意思疎通や身の回りのことが一切できない状態(俗に言う植物状態)を指します。具体的には以下のような状態が続きます。
・自力での会話・意思表示ができない
・自力での飲食・排泄ができない
・自力での寝返り・歩行ができない
・呼びかけや刺激に対する反応がほとんどない
このような状態が少なくとも3か月以上持続している場合、遷延性意識障害と判断されます。脳全体が機能停止して回復が見込めない「脳死」とは異なり、意識回復の可能性もゼロではありません。しかし、昏睡状態にある間は床ずれを防ぐための体位変換や血栓予防、たん吸引や衛生面を保つためのケアなどが常に必要になり、仮に意識が戻っても要介護の状態が続くことは間違いないでしょう。
遷延性意識障害と診断されるケース

医師による診断では、以下の6項目を満たす状態が3か月以上継続した場合、遷延性意識障害と診断されることが一般的です。
① 自力移動不可能
② 自力摂食不可能
③ し尿失禁状態にある
④ たとえ声を出しても意味のある発語は不可能
⑤ 「目を開け」「手を握れ」などの簡単な命令にはかろうじて応じることもあるが、それ以上の意思の疎通は不可能
⑥ 眼球はかろうじて物を追っても認識はできない
診断には、脳神経外科医やリハビリ科医などの専門的な所見や検査データが参考にされます。
遷延性意識障害の後遺障害認定のポイント
遷延性意識障害が認められた場合、後遺障害等級としては原則「1級1号(最重度)」が認定されます。ただし、適切な等級認定を受けるには、専門医による詳細な後遺障害診断書に加え、MRIやCTなど脳損傷を確認できる画像検査資料、介護記録や医療機関での療養経過などが必要です。
なお、意思表示能力や判断能力を持たない被害者自身が損害賠償請求を行うことはできないため、代理人すなわち成年後見人を選任する必要があります。成年後見人が決まるまでは、ご家族であってもご本人の代わりに損害賠償請求を行ったり弁護士に依頼をすることはできないので、まずは家庭裁判所に後見人選任を申し立てるのが最初にすべき手続きになります。
損害賠償の対象となる費用
遷延性意識障害では本人の治療や生命維持のための費用はもちろん、ご家族の介護が生涯にわたって必要になるため、損害が非常に高額になります。例えば、以下のような費用が損害賠償の対象となるでしょう。
・医療費(入院費、薬代、医療機器など)
・将来の介護費用(施設・訪問介護・家族介護)
・介護用品・器具費用(車椅子、介護用ベッド等)
・住宅改造費(バリアフリー化など)
・逸失利益(働けなくなったことによる収入の喪失)
・慰謝料(被害そのものに対する精神的損害)
・後見人選任費用
遷延性意識障害のような重篤なケースでは、生涯にわたる介護費用や逸失利益など、賠償額が非常に高額になる可能性があります。しかし、内容が複雑であることから被害者のご家族が自身で必要十分な金額を導き出すことは難しく、また加害者側の保険会社は費用をなるべく抑える方向で交渉してくるため、適正な損害賠償請求を希望する場合は弁護士への相談が欠かせません。
遷延性意識障害と診断されたら弁護士にご相談を
遷延性意識障害は損害賠償が高額になる分、将来的な費用も見越した損害賠償額の算定をしたうえで、加害者側の保険会社と十分な交渉を行い、場合によっては訴訟も視野に入れる必要があります。
「交通事故の相談窓口」では、遷延性意識障害と診断された後の対応や後遺障害認定手続をサポートします。初回相談は無料ですので、お気軽にご相談ください。