交通事故によってご自身やご家族が高次脳機能障害などの重い後遺症を負ってしまった場合、加害者に対して損害賠償を請求することができます。しかし、そのためには保険会社との交渉や必要書類の準備など、専門的で複雑な手続きが数多く発生します。最初は自分で対応していたものの、「保険会社から提示された金額が妥当かわからない」「やり取りが負担になってきた」と感じ、途中で弁護士に依頼する方も少なくありません

本記事では、交通事故による高次脳機能障害の損害賠償請求を行ううえで、なぜ弁護士のサポートが重要なのか、交渉時に注意すべきポイントや信頼できる弁護士の選び方などを詳しく解説します。

高次脳機能障害とは?


高次脳機能障害とは、交通事故などで脳に損傷を受けた結果、注意・集中力障害、記憶・記銘力障害、遂行機能障害などの認知障害等が生じる後遺症のことを指します。

高次脳機能障害の特徴と典型的な症状

高次脳機能障害の特徴は、身体的には回復して一見外傷はないように見えても、思考や精神面に異常を来たしている場合があるという点です。具体的には、被害者は以下のような症状に悩まされるケースがあります。

・新しいことを覚えられなかったり物忘れが激しいなど、十分な記憶が保てない
・気が散りやすかったり仕事上のミスを多発するなど、注意力が続かない
・感情がコントロールできず、怒りやすくなったり自己中心的な行動を取ってしまう
・性格が変わってしまい、職場や家庭で以前と同じような人間関係を築けない

交通事故の前後でこうした変化が明らかに生じている場合は、高次脳機能障害が原因の可能性が高いでしょう。しかし、このような症状を把握している人は少ないので周囲からは理解を得るのが難しく、被害者本人はもちろん、家族も大きな苦しみを抱えることが少なくありません

高次脳機能障害の損害賠償請求が難しい理由

高次脳機能障害の損害賠償請求は、他の後遺障害に比べても立証が非常に難しい分野です。なぜなら、外見上は健常に見えることも多いことから、症状の存在や程度を証明できる資料の提出やそれを補う論理的な主張を強く求められるためです。

仮に保険会社から「交通事故の前からそのような状態だったのでは?」と指摘されても反論できるような証拠がなければ、被害に応じた適正な損害賠償を得るのは難しいでしょう。

被害者自身が高次脳機能障害の損害賠償請求を行うことは可能?


「弁護士費用がもったいないから自分で保険会社に交渉したい」と考える方もいるかもしれません。弁護士の力を借りずに被害者や家族が自ら損害賠償請求を行うことは不可能ではありませんが、膨大な時間や手間がかかるうえに、最終的に損害を補えるほどの金額の請求ができない結果に終わるリスクがあります。必要な証拠を揃えて保険会社を説得するためには法的・医学的知見が不可欠であり、これを被害者自身が一から行うのは極めて困難だからです。この詳細は「高次脳機能障害の損害賠償請求を弁護士に依頼すべき理由」のパートで解説しています。

金銭的理由で弁護士への相談をためらっている方は、「弁護士費用特約」の利用も検討すると良いでしょう。被害者もしくは家族の自動車保険などに付帯されている場合、自己負担なしで弁護士に依頼できることが多いです。また、弁護士特約が使えない場合でも、着手金なしで成功報酬型のサポートを提供している弁護士もいるので、事前に料金体系を確認しておくことをお勧めします。

被害者が保険会社との対応で直面しやすい問題


最初は自身で加害者側の保険会社との対応をしていても、多くの方が次第にその複雑さと負担の大きさに限界を感じ始めます。ここでは、被害者自身で対応する際に直面しやすい問題を具体的に解説します。

専門知識の不足

高次脳機能障害の正確な立証には医学・法律両面の専門知識が求められます。後遺障害等級認定の基準や損害賠償額の算定方法を正しく理解していなければ、保険会社から提示された金額が妥当かどうかを判断することは困難でしょう。表面的には十分な金額に見えても、将来的に発生する費用も踏まえると実際には必要な補償額に達していないケースも珍しくありません。

頻繁なやり取り

被害者自身が手続きを進める場合、加害者側の保険会社だけでなく、医師や自賠責保険会社、警察、検察など複数の関係者との連絡・調整が必要になります。資料の追加提出を求められたり、保険会社の要求に応じたりと、個別対応が次々と発生し、想像以上に多くの時間と労力を奪われるでしょう。このような事務的負担は大きな精神的ストレスとなります。

膨大な書類の準備

適正な損害賠償請求を行うには、診断書、後遺障害診断書、診療報酬明細書、画像検査資料、交通事故証明書など、多岐にわたる書類を準備・提出する必要があります。いずれも内容次第で賠償額が大幅に下がる可能性のある重要な書類ですが、これらすべてを漏れや誤りなく正確に揃えることは容易ではありません。

相手方保険会社との交渉で気を付けなければいけないこと


交通事故の損害賠償交渉では、相手方保険会社の担当者は交渉のプロであることを忘れてはいけません。彼らは日常的に弁護士や医師とやり取りし、数多くの事例を経験しています。そのため、知識や交渉力に大きな差がある状態で被害者が対応すると、知らないうちに不利な条件で話が進んでしまうことがあります。ここでは、特に注意すべき3つのポイントを整理しておきましょう。

損害賠償額を不当に抑えられないようにする

保険会社の交渉として多いのが、損害賠償額の引き下げです。保険会社は、支払う賠償金をできる限り抑える方向で交渉をする傾向があります。そのため、被害者に提示される金額は「最低限の水準」であることが少なくありません。保険会社の主張が合理的なものであれば検討の余地がありますが、根拠に乏しい説明や一方的な判断に対しては明確な反論をしなければなりません。

また、そもそも、保険会社の主張が合理的なのか、不合理なのかを判断することは、専門家ではない被害者には困難です。

不当に低い後遺障害認定を受けないようにする

損害賠償の金額を左右する大きな要因に、後遺障害等級の認定結果があります。この等級が1つ違うだけでも賠償額が数百万円、数千万単位で変わるほど重要な判断材料ですので、被害者側が主体となって、できる限り高い後遺障害等級を獲得します(被害者請求)。

これに対して、加害者側が申請を行う「事前認定」の場合は、提出資料の作成から医師への照会内容まで、ほとんどの手続きが保険会社主導で進められます。この過程で実際より軽い症状と判断され、低い等級で認定されてしまうことも少なくありません。そのような場合は、異議申立てによって認定を見直すよう働きかける必要があります。

また、高次脳機能障害の事案では、保険会社は、被害者が獲得した後遺障害等級を下回る内容で交渉をしてくることもあります。このような交渉に対しては、訴訟も視野に入れた対応を検討するべきです。

被害者側の不利な条件で交渉を進められないようにする

法律知識のない方が交渉を行うと、多くの場合保険会社のペースのまま不利な条件で示談がまとまってしまいます。一度示談が成立すると、その内容を後から覆すことは極めて困難であり、取り返しがつきません。

そのため、対応が煩わしくて早く終わらせたいと思っても、納得できるまでは交渉を続けた方がいいでしょう。ただし、自分自身で対応することに限界を感じたら迷わず専門家である弁護士に相談しましょう

高次脳機能障害の損害賠償請求を弁護士に依頼すべき理由


ここまで見てきたように、高次脳機能障害の損害賠償請求は被害者自身でも対応可能ではあるものの、弁護士に依頼した方が高確率で良い結果を得られます。その理由を以下の4つの観点から解説します。

損害賠償額を弁護士基準で算定できるため増額しやすい

損害賠償額の算定において、保険会社と弁護士では使用する基準が異なります。保険会社が提示する損害賠償額は「任意保険基準」と呼ばれる独自の算定基準に基づいており、裁判で認められる基準よりも低く設定されていることが一般的です。

一方で、弁護士は「弁護士基準(裁判基準)」を使用して過去の判例や裁判所の判断に基づいて損害額を算定できるため、本来受け取るべき金額を適正に主張できます。法律知識のない方がこの基準をもとに正確な損害額を示すことは難しいので、弁護士に依頼することで増額しやすくなります

医学的知見のある弁護士なら十分な証拠を揃えられる

高次脳機能障害は見た目からはわかりづらい障害であるため、適正な等級認定を受けるには医学的な裏付けが不可欠です。診断書だけでなく医師の意見書、画像検査資料など、専門的な資料をどのように揃え、どう活用するかが結果を左右します。交通事故案件に精通した弁護士であれば、医師との連携を図りながら必要な証拠を準備し、後遺障害等級の認定や損害額算定に有利な形で主張を組み立てることができます

裁判になっても有利に進めやすい

保険会社との交渉で折り合いがつかない場合、最終的に裁判での解決に進むことがあります。裁判では法律的な主張・立証が求められるため、専門家の支援なしに戦うのは非常に困難です。弁護士が代理人として交渉の経緯や証拠を整理し、法的根拠に基づいて主張を行うことで、被害者側に有利な判決を引き出せる可能性が格段に高まります。

また、早い段階で弁護士が介入していると、保険会社は裁判まで至った場合は不利になる(弁護士基準が用いられる)と理解しているため、交渉の過程でもより誠実な対応を取るケースも見られます。

保険会社とのやり取りをすべて任せられる

弁護士に依頼すれば、保険会社とのやり取りや書類提出、交渉のスケジュール調整など、すべての事務手続きを任せることができます。これにより、被害者や家族は治療や生活再建に専念でき、精神的な負担を大きく減らせるでしょう

また、弁護士が窓口になることで、保険会社からの圧力や不安を感じるやり取りもなくなり、安心して手続きを進めることができます。交渉のストレスから解放されるというのは、事故後の不安定な状況に疲弊している被害者にとって大きなメリットです。

高次脳機能障害の事案の対応で信頼できる弁護士の選び方


弁護士は全国に4万人以上いるといわれますが、依頼する弁護士によって算定される損害賠償額や解決までのプロセスは大きく異なります。特に高次脳機能障害のように医学的立証や専門的な交渉力が求められる分野では、信頼できる弁護士を選ぶことが理想的な結果に至るための最短ルートです。弁護士を探す際は、主に以下のポイントを大切にしましょう。

十分な実績があるか

交通事故案件、特に高次脳機能障害を扱った実績が豊富な弁護士を選ぶことが最も重要です。過去にどのような事例を解決してきたのか、どの程度の賠償額を獲得してきたのかを確認することで、その弁護士の信頼性を判断する手がかりになります。

また、保険会社の代理人を務めた経験がある弁護士であれば、相手方の対応の傾向を踏まえ、予測を立てたうえで交渉を進められる可能性が高いです。

被害者に寄り添ってくれるか

高次脳機能障害の事案では、示談が成立するまで数ヶ月から場合によっては1年以上かかるケースもあるので、単に法律の知識や実績を備えているだけでなく人間的な相性も考慮した方がいいでしょう

相談の際にしっかりと話を聞き、わかりやすく説明してくれるか、精神的に厳しい状況下にある被害者に寄り添った対応をしてくれるか、といった顧客に向き合う姿勢を見ることも後悔しない弁護士選びには大切です。

料金体系が明確か

弁護士費用の仕組みが分かりづらいと、依頼後に思わぬトラブルになることもあります。ホームページに着手金・報酬金・成功報酬の金額や弁護士費用特約の利用可否などを掲載しており、明確に説明してくれる弁護士を選びましょう。支払いのタイミングなども確認しておくと安心です。

レスポンスが速いか

メッセージや電話をしてもすぐに返答が得られない弁護士では、保険会社との交渉が順調に進んでいるのか不安になってしまうでしょう。質問や相談に対するレスポンスが速く、進捗や次の対応方針をこまめに共有してくれる弁護士に依頼するのがおすすめです。

契約後でなければ判断が付きづらい要素ではありますが、最初の問い合わせから初回相談、契約に至るまでの過程でストレスを感じないスピード感で対応してもらえるかを確認して見極めましょう。

まとめ


高次脳機能障害は見た目では分かりにくく、適正な損害賠償を受けるには高度な医学的・法律的知識が必要です。被害者やご家族が自力で対応することも不可能ではありませんが、保険会社との交渉や膨大な書類の準備など大きな負担を伴います。また、高次脳機能障害の事案の経験が豊富な弁護士に依頼すれば適正な損害賠償額を得られる可能性が高まるので、早めに相談することが大切です。

高次脳機能障害の損害賠償請求で弁護士をお探しの方は、「交通事故の相談窓口」にご相談ください。加害者が加入する任意保険会社の代理人を務めていた弁護士がサポートするため、保険会社側の反論のポイントを抑えて見通しを立てながら被害者にとって最善の選択を行うことができます。

初回相談は60分無料です。お気軽にお問い合わせください。

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